歯が痛くなければ歯が健康と考えて良いですか?
自分の歯が健康を思っている人の場合、おそらくその根拠は歯に痛みがないことではないでしょうか。
と言うのも、多くの人は歯の痛みをきっかけに虫歯を自覚するケースが多く、
そのせいか「歯が痛くない=歯が健康」という図式を成り立たせてしまう人が多いのです。
しかしこの図式は間違っており、歯の痛みの有無は歯の健康状態を示す根拠にはなりません。
歯が痛くならない虫歯もある
まず歯の痛みから真っ先に連想するのは虫歯でしょうが、実は虫歯になっても歯が痛まないケースがあります。
次のケースではいずれも歯に痛みを感じず、そのため「歯が痛くない=虫歯がない」とは限りません。
初期の虫歯
いわゆる虫歯になりたての状態です。虫歯は最初歯の表面にできて、そこから奥(歯の下)に進行します。
歯の表面にはエナメル質がありますが、このエナメル質は象牙質を刺激から保護しており、
そのため歯の表面のみ虫歯になった状態では痛みを感じることはありません。
神経を失った歯の二次虫歯
二次虫歯とは虫歯の再発です。最初の虫歯の過程で神経を失うと、治療しても神経を戻すことはできません。
また、虫歯治療において神経の除去が必要になることもあるでしょう。
神経を失った歯は以後感覚を失うため、その歯が再度虫歯になっても痛みを感じることがないのです。
進行して神経が死んだ虫歯
虫歯が神経まで進行すると、痛みどころか激痛を感じるようになります。
しかし、それ以降は痛みを一切感じなくなり、これは虫歯の進行によって神経が死んでしまうためです。
最も、この場合はそれ以前に激痛を感じていますから、その段階で充分虫歯を自覚できているはずでしょう。
歯周病は歯に痛みを感じない
歯周病は「歯の周りの病気」と書くとおり歯の病気ではなく、それを支える骨の病気です。
歯がグラつくほど進行すれば噛み合わせた時に歯に痛みを感じますし、
進行によって歯肉退縮が起これば露出した歯根が原因で知覚過敏が起こるでしょう。
しかし、それ以外のケースでは基本的に歯周病で歯に痛みは感じず、
実際に歯周病は「静かなる病気」とも呼ばれています。
明確な自覚症状が少ない歯周病は、自身で発症の有無を判断するのは難しいでしょう。
最も、歯周病は高齢の人のみに発症する病気と思う人がいますが、それも大きな間違いです。
確かに、歯を失うほど歯周病が進行するのはそれなりの年齢の人に限られるかもしれませんが、
初期の歯周病に相当する歯肉炎に至っては小学生の子供ですらかかります。
歯の健康状態を知るには
虫歯や歯周病の有無を知るための自己診断のようなものもありますが、あくまでそれは参考程度です。
歯の健康状態を確実に知るためには、歯科医院で検診を受けるべきでしょう。
検診では歯の健康状態…正確には口の中全体の健康状態を確認します。
このため虫歯や歯周病の有無はもちろん、詰め物や被せ物などの人工物の異常の有無も確認可能であり、
痛みを感じないケースの虫歯や歯周病においてももちろん発見と治療が可能です。
また、検診を定期的に受けることは何よりこれらの病気を予防する効果も高めます。
歯磨きの効果を高める磨き方を覚えよう
虫歯や歯周病を予防するために基本…それは毎日の歯磨きです。
ちなみに「1日3回歯磨きしても虫歯になる」と相談を受けることがありますが、
歯磨きにおいて大切なのは頻度や回数よりも精度であり、精度の低い歯磨きに充分な予防効果はありません。
次の方法で歯磨きの精度を高めれば、歯磨きの効果が高くなって虫歯や歯周病を予防しやすくなります。
デンタルフロスや歯間ブラシの使用
デンタルフロスを使用すれば歯と歯の間の隙間、歯間ブラシを使用すれば歯と歯肉の境目を磨きます。
いずれの箇所も通常のブラッシングでは綺麗に磨き切れず、
そのためデンタルフロスや歯間ブラシを使用すれば歯磨き時のプラークの除去率が20%も高まるのです。
ブラッシング指導を受ける
検診や予防歯科を受診すると、虫歯や歯周病に対する様々な予防治療を受けられます。
そして、予防治療の中には歯磨きの技術向上を目的としたブラッシング指導があります。
これを受けることで正しい歯磨きの仕方が分かり、実践すれば効率の良い精密な歯磨きが可能です。
プラークテスターを使用する
プラークテスターを使用すれば、磨き残しプラークを染色して目に見える状態にさせられます。
無色透明のプラークが目に見える状態になることで確実に除去できますし、
繰り返し使用すれば磨き残しのパターンが分かり、自分の歯磨きの弱点を知る参考にもなるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯の痛みの有無は歯の健康状態を示す根拠にならないことについてまとめます。
1. 歯が痛くならない虫歯もある :初期の虫歯、神経を失った歯の二次虫歯などは歯に痛みを感じない
2. 歯周病は歯に痛みを感じない :歯周病は「静かなる病気」と呼ばれ、目立った自覚症状がない
3. 歯の健康状態を知るには :歯の痛みの有無を参考にするのではなく、歯科医院で検診を受ける
4. 歯磨きの効果を高める磨き方を覚えよう :デンタルフロスや歯間ブラシを使用するなど
これら4つのことから、歯の痛みの有無は歯の健康状態を示す根拠にならないことについて分かります。
歯が痛くないとしてもそれは歯が健康な根拠にはならず、初期の虫歯や歯周病の可能性があります。
また、神経を失った歯の二次虫歯にも歯に痛みはなく、歯が痛くない虫歯のケースは多々あるのです。
このため、歯が痛くない人でも歯科医院で診察を受けると思わぬ病気が発覚するかもしれません。