本人が見栄えを気にしないなら、いくら歯並びが悪くても矯正する必要はないですか
矯正、インビザラインを行っている南浦和の歯医者さん、くろさき歯科です。今回は歯並びについて解説いたします。
出っ歯、受け口、乱杭(らんぐい)歯など、歯並びが悪い事に悩んでいる人は少なくありません。口は顔の中心の目立つ位置にあり、口を開けた時には、歯が見えます。歯並びは、顔の印象を左右すると言っても過言ではありません。欧米では歯並びの良い美しい歯は社会的アドバンテージとして高く評価されます。一方、日本では「八重歯がかわいい」と言われていた時代もあり、矯正に対する意識が高まってきたのは、割と最近の事です。多少の歯並びの悪さは、あまり気にしない人も、まだまだ多いように思います。
では「歯並びが悪くてもいい」と考えている人は、矯正治療は必要が無いのでしょうか。
1.悪い歯並びがもたらす悪影響
(1)虫歯や歯周病のリスクが高まる
歯並びが悪いと、歯並びに凹凸が増え、汚れが溜まりやすくなります。歯磨きをしても磨き残しを作りやすくなり、虫歯菌や歯周病菌が増え、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
また、通常お口の中は、唾液によって汚れを洗い流す“自浄作用”はが働いていますが、歯並びが悪いと、この“自浄作用”が阻害されるため、汚れが溜まりやすくなります。
(2)発音への悪影響
特に前歯の歯と歯の間に隙間が空いていると、話す時に隙間から空気が抜けて、話しづらくなる事があります。また、ひどい凹凸のある歯並びや、上下の前歯が噛み合わず常に開いた状態である場合や、受け口の場合、舌の動きが制限されるため、発音がしづらくなる事があります。特にサ行やタ行が不明瞭になります。
(3)咀嚼(そしゃく)への影響
咀嚼とは、食べ物を飲み込み消化しやすい形態に噛み砕く事をいいます。歯並びが悪いと、食べ物を前歯で噛み切る事が難しい場合や、奥歯でしっかりと噛み砕く事ができにくくなります。胃腸に負担がかかり、消化不良の原因になります。
“噛むこと”は“脳への刺激”になるといわれています。歯並びが悪い事により、噛む回数が少なくなると、脳への血流が悪くなるため、知能や運動機能の発達に影響が出る事も考えられます。
また、噛む回数が少ないと、満腹中枢が刺激されにくくなり、暴飲暴食の原因にもなり、肥満を招く事もあります。
(4)顎関節への影響
歯並びが悪いと、噛む時に、顎にかかる力が均等に分散されず、どこかに過剰な負荷がかかってしまう事があります。顎に負荷がかかりすぎると、顎関節症を引き起こす事があります。顎関節症には、次のような症状があげられます。
・ 噛む時に、顎関節や、周囲の筋肉が痛む
・ 口を開けたり閉じたりする時に、顎関節で音が鳴る
・ 口をスムーズに開ける事ができない
・ 口を大きく開けようとすると痛みがある
(5)顔への影響
歯並びの悪さは、歯そのものの見た目を悪くするだけではありません。歯並びが悪い事で、顔の形を歪ませ、見た目の美しさや印象に悪影響を与えます。
歯が前に飛び出している状態(出っ歯)だと、唇が閉じづらくなり、口元の筋肉が衰え、だらしが無い口元になりやすくなります。 また、噛み合わせが悪いと、口周りの筋肉のバランスが悪くなり、顔の左右がゆがんでしまう事があります。
(6)全身への影響
歯並びの悪さは、身体全体のバランスが乱れる原因になります。身体の歪みにより、頭痛や肩こり・めまいなどを起こす事があります。
2.矯正治療のメリット
矯正治療は、歯並びが整い、見た目が美しくなるだけではありません。他にも歯や身体にとって、多くのメリットがあります。
(1)見た目が美しくなる
きれいな整った歯並びは、見た目に美しく、良い印象を与えます。そして、美しくなるのは、歯並びだけではありません。噛み合わせが良くなる事で、口の周りや顎の周りの筋肉のバランスが良くなり、引き締まったバランスの良い顔立ちになります。
(2)虫歯や歯周病になりにくくなる
歯並びが整うと、汚れが溜まりやすい凹凸が減るため、汚れが溜まりにくくなります。また、清掃をしやすい口腔内になるため、磨き残しが少なくなります。
(3)美味しく食事ができる
しっかりと咀嚼(そしゃく)できるようになり、食事を美味しく感じられるようになります。消化吸収が良くなり、胃腸への負担も少なくなります
唾液の分泌が促進される
咀嚼能力が高まると、唾液の分泌が増加し、唾液の作用が働きやすくなります。唾液の作用には次のようなものがあります。
a. 自浄作用:口の中の最近や食べカスを洗い流そうとする働きです。
b. 消化作用:デンプンを分解して、食べ物が消化吸収しやすいように助けます。
c. 殺菌作用:歯垢(プラーク)の発生を抑えます。
d. 保護作用:口の中の粘膜が傷つかないように保護します。
e. 再石灰化作用:歯質から溶け出したカルシウムやリンなどの成分を再び歯に取り込みます。
f. 緩衝作用:お口の中のpHを、酸性から元の状態に戻そうとします。
(5)心理面のプラス効果
コンプレックスが解消され、前向きになります。これまで歯並びをあまり気にしてこなかった方でも、口を開けた時に美しい歯が見える事で、自然の笑顔が増えたと感じる人も多いようです。また、矯正を行った事で、歯に対する意識が高まり、丁寧に歯をケアするようになる人も多く、とても良い効果だと思います。
3.悪い歯並びの例
(1)叢生(そうせい)
乱杭(らんぐい)歯とも言われます。いわゆるデコボコとした歯並びで、顎の大きさに対して、歯が並びきるスペースが無い場合などに起こります。
(2)開咬(かいこう)
普通に噛んだ状態でも、奥歯数本でしか噛み合わず、前歯が噛み合ないので、物が食べられない状態です。
(3)上顎前突(じょうがくぜんとつ)
いわゆる出っ歯と言われる状態です。上の前歯が前方に傾いている場合、上顎が大きい場合、下顎が小さい場合などがあります。
(4)反対咬合(はんたいこうごう)
いわゆる受け口と言われる状態です。上の歯よりも下の歯が前にでている状態です。
(5)過蓋咬合(かがいこうごう)
噛んだ時に、下の歯がほとんど見えない状態です。噛み合わせが深く、下顎の動きが制限されます。
4.歯並びをチェックしましょう
見栄えを気にしないあまりに、歯並びを気にしてこなかった方も、ご自分の歯並びはどうなのかをチェックをしてみましょう。ただし、歯並びは自己診断ができるものではありませんので、正しい診断は、歯科医院で行ってもらうようにしましょう。歯並びのチェックは、矯正専門医で無くてもできます。歯科医院によっては、簡単に歯並びをチェックした後、矯正が必要なケースであれば、矯正専門医に引き継がれる場合があります。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。歯並びは、見栄えだけの問題ではありません。「悪い歯並びがもたらす悪影響」と「矯正治療のメリット」についてまとめます。
<悪い歯並びがもたらす悪影響>
a. 虫歯や歯周病のリスクが高まる:汚れが溜まりやすくなり虫歯・歯周病のリスクが高まる。
b. 発音への悪影響:特にサ行やタ行が不明瞭になる。
c. 咀嚼への影響:消化不良を起こしやすい。脳への刺激が減少により、知能や運動の発達に影響する。満腹中枢が刺激されず暴飲暴食肥満の原因にもなる。
d. 顎関節への影響:顎関節症を起こしやすい。
e. 顔への影響:顔の歪みの原因になる。
f. 全身への影響:頭痛・肩こり・めまいの原因になる。
<矯正治療のメリット>
a. 見た目が美しくなる:口元だけで無く、顔のバランスも整い美しくなる。
b. 虫歯や歯周病になりにくくなる:凹凸が減り、汚れが溜まりにくくなる。
c. 美味しく食事ができる:味を感じやすくなる。胃腸への負担が減る。
d. 唾液の分泌が促進される:唾液の作用が十分に発揮され、虫歯や歯周病のリスクが減る。また歯や粘膜などお口の中を守る機能が働く。
e. 心理面のプラス効果:前向きになる。歯に対する意識が高まる。
これまで、見栄えを気にしないあまりに、矯正治療を考えてこなかった方も、一度歯並びを良くする事について考えてみるのはいかがでしょうか。